FACE × FAMILIARITY × WORKING MEMORY

ワーキングメモリ(視覚性短期記憶)に関する文献リストです。特に、顔に対する親近性の高さがワーキングメモリに与える影響について調べた研究を集めてあります。

このリストにある研究の一部を引用して書いたレビュー論文が、人文論究(関西学院大学文学部・文学研究科紀要)に掲載されました。

→ 西村 友佳・小川 洋和 (2021). 親近性が視覚性短期記憶容量に及ぼす影響 人文論究, 70(4), 1-18.

face


general

  1. Saylik, R., Raman, E., Szameitat, A. J. (2018). Sex differences in emotion recognition and working memory tasks. frontiers in Psychology, doi: 10.3389/fpsyg.2018.01072
    • 表情顔に対してspatial working memory (SWM, 視空間スケッチパッドの容量)、stocking of Cambridge (SOC)、intra/extra dimensional shifts tasks (IED, 中央実行系の機能の操作)を実施。
    • 女性参加者は男性参加者と比べて、ポジティブな顔に対してもネガティブな顔に対しても反応が速い。
    • 女性参加者はSMWの成績が良かったが、男性参加者は、SOCとIEDで良かった。WMの処理構成は、男女で違うらしい。

 

 

encoding / consolidation

  1. Gao, Z., & Bentin, S. (2011). Coarse-to-fine encoding of spatial frequency information into visual short-term memory for faces but impartial decay. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 37, 1051-1064.
    • 顔のVSTMへの符号化は低空間周波数情報から高空間周波数情報の順で行われる。
    • 800 msで高空間空間周波数情報も符号化し終える。
    • 忘却は低空間周波数情報も高空間周波数情報も同時。

 

 

familiarlity

  1. Anzures, G., Quinn, P. C., Pascalis, O., Slater, A. M., Tanaka, J. W., Lee, K. (2013). Developmental origins of the other-race effect. Current Directions in Psychological Science, 22, 173-178.
    • 人種効果の発達に関する2013年版レビュー。
    • 人種効果は、対象をfamiliar・unfamiliarにカテゴリー分けできる能力の発達について調べるのにもってこい。
    • 人種効果から自然な経験(特定の環境[例:単一民族国家]からのインプット)がどのように顔の認識に影響するかを見られる。
    • 他人種に対する経験の質が人種効果(特に全体処理の違い)に及ぼす影響について。
    • 白人の参加者においても黒人の参加者においても、他人種の個人を識別した経験(自己報告)と全体処理における人種効果の間に負の相関が見られた。個人の識別をした経験が多いほど、全体処理における人種効果量が少なくなる。
    • 顔の全体処理の発達には個人を識別する経験が重要。経験の質が他人種顔の処理方法を決定する重要な要因だと考えられる。
  2. Burton, A. M., Schweinberger, S. R., Jenkins, R., & Kaufmann, J. M. (2015). Arguments against a configural processing account of familiar face recognition. Psychological Science, 10, 482–496.
    • 顔の認識は全体処理(1次処理・ホリスティック処理・2次処理)だと言われているが、親近性の高い顔の処理において、2次処理は必要だろうか?(きっと重要じゃない)と主張するレビュー論文。
  3. Buttle, H., & Raymond, J. E. (2003). High familiarity enhances visual change detection for face stimuli. Perception & Psychophysics, 65, 1296-1306.
    • 有名人顔と未知顔(他の国の学校の卒アル写真)を使って変化検出課題を実施。
    • 有名人の方が正答率が良い。親近性(superfamiliarity)の効果は左視野に呈示された刺激にだけ見られた。倒立顔ではこの効果は見られなかった。
    • 親近性(superfamiliarity)は効率的な情報処理をもたらす。全体処理モードを活性させる。
    • Category-Individuationモデル(人種効果の説明モデルのひとつ)
    • 社会的なカテゴリーに区別すること、個人を識別しようとする動機づけ、知覚経験を統合したモデル。
    • 親近性の高い自人種顔は、符号化時にどこへ注意を向けるべきかが分かるために個人間の区別をしやすく、その結果、自人種顔の方が他人種顔よりも記憶しやすくなる。
  4. Jackson, M. C., & Raymond, J. E. (2008). Familiarity enhances visual working memory for faces. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 34, 556-568.
    • 有名人顔 vs. 一般人顔のVWM容量について。
    • 有名人顔の方がよく覚えられる。倒立顔にすると、効果がなくなる。
    • 言語的な符号化ができないようにしていたので、戦略的・言語的なサポートがあったからよく覚えられたわけではない。低次な特徴処理の問題でもない。長期記憶の中に既に頑健な表象が存在していることが大事(それによってチャンキングが上手くいっている?)。
  5. Lee, K., Quinn, P. C., & Pascalis, O. (2017). Face race processing and racial bias in early development: A perceptual-social linkage. Current Directions in Psychological Science, 26, 256-262.
    • 人種効果の発達に関する2017年版レビュー。
    • 潜在的な人種バイアスの発生との関係についても書いてある。
  6. Lorenc, E. S., & Pratte, M. S. (2014). Expertise for upright faces improves the precision but not the capacity of visual working memory. Attention, Perception, & Psychophysics, 76, 1975–1984.
    • 正立顔(熟達した見方)と倒立顔(熟達していない見方)で記憶容量(K)と正確性(分布のSD)を比較。
    • 熟達化は容量には影響しないが、正確性に影響する(熟達している方が正確)。
  7. Shafai, F., & Oruc, I. (2018). Qualitatively similar processing for own- and other-race faces: Evidence from efficiency and equivalent input noise. Vision Research, 143, 58-65.
    • 認識効率は自人種でも他人種でも同じ。
    • ノイズが増えるにつれて、人種効果が現れる。
    • 自人種顔と他人種顔で、知覚的な処理過程に質的な違いがある訳ではない。
  8. Stelter, M., & Degner, J. (2018). Investigating the other-race effect in working memory. British Journal of Psychology, 109, 777-798. 
    • 長期記憶における人種効果は、もっと早い段階の処理での違いが原因なのか?他人種効果はVWMで観察されるか?
    • 4つのVWM課題を行なった。
    • どの実験においても、一貫して自人種顔の方が他人種顔よりもパフォーマンスが良かった。保持できる数も、自人種の方が多い。
  9. Uddenberg, S., & Scholl, B. J. (2018). TeleFace: Serial reproduction of faces reveals a whiteward bias in race memory. Journal of Experimental Psychology: General, 147, 1466-1487.
    • 実験参加者が白人だと、他人種顔の記憶表象が白人顔に寄る。
    • これは顔を人種を軸にして連続的に変化させたときに起こる。
    • 顔空間の中心にあるものに表象が寄っていく。
  10. Valentine, T., & Endo, M. (1992). Towards an exemplar model of face processing: The effects of race and distinctiveness. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 44A, 671-703.
    • 顔空間による人種効果の説明。
    • これまで見てきた顔(学習データが多いもの)が空間の中心に(→細かい区別ができる)、あまり見たことのない顔は空間の外の方に(→細かい区別はできない)付置される。
    • 未知顔がどれくらい正確に覚えられるかは、未知顔が空間のどこに配置できるかによる。空間の外の方にあると、顔の細かい違いがわからないため、記憶が曖昧になる。特異性は高いため、「白人に会った」「黒人に会った」ということは覚えている。
  11. Young, A. W., & Burton, A. M. (2017). Recognizing faces. Current Directions in Psychological Science, 26, 212-217.
    • 人は顔の認識が得意であるという考え方が広まっている。しかし、それはよく知っている人の顔だけである。
    • 顔は、日常生活の中ではいろんな見え方をする。知っている人の顔はどんな状況下にあってもわかるが、知らない人の顔だとわからない。
    • これまで顔画像の変異性についてどのように研究されてきたのか、理論を発展させてきたのかをレビューする。
  12. Young, A. W., & Burton, A. M. (2018). Are we face experts? Trends in Cognitive Science, 22, 100-110.
    • 知った顔なら角度やサイズが変わっても認識できるのに未知顔だとそれが難しい。
    • このメカニズムについて、顔空間モデルの枠組みから、統一的に説明できる可能性があることを示したレビュー。
  13. Zhou, G., Liu, J., Xiao, N. G., Wu, S. J., Li, H., & Lee, K. (2018). The fusiform face area plays a greater role in holistic processing for own-race faces than other-race faces. frontiers in Human Neuroscience, 12, 1-16. doi: 10.3389/fnhum.2018.00220
    • 行動実験から、人種効果は自人種の方が他人種よりも全体的に処理されているからだと考えられてきた。しかし、脳活動においてもそのような違いが見られるかは検討されていなかった。
    • fMRIを使って、合成顔課題をやっている最中の顔の処理をしている所(FFA、OFA)の活動を調べた。
    • 右のFFAが、他人種よりも自人種の顔で全体処理をする大きな役割を果たしていた。

 

 

encoding / consolidation

  1. Butcher, N., Lander, K., Fang, H., & Costen, N. (2011). The effect of motion at encoding and retrieval for same- and other-race face recognition. British Journal of Psychology, 102, 931-942.
    • 動きが未知顔の符号化と検索に与える影響。
    • 他人種顔でも自人種顔でも符号化時に動いている方がいい。
    • 人種効果あり。
  2. Chiou, R., &  Lambon Ralph, M. A. (2018). The anterior-ventrolateral temporal lobe contributes to boosting visual working memory capacity for items carrying semantic information. NeuroImage, 169, 453-461.
    • Brady et al. (2016) を顔で再現した研究(色 vs 未知顔 vs 既知顔)。
    • 色よりも顔で呈示時間が伸びるほど容量が増えたし、未知顔よりも既知顔で容量が多くなった。
    • 経頭蓋磁気刺激でanterior temporal lobe (ATL)を刺激すると、既知顔の容量の変化量が他の場所を刺激したときよりも小さくなった。※ ALT:顔とその人についての知識を結びつける。
  3. Curby, K. M., & Gauthier, I. (2007). A visual short-term memory advantage for faces. Psychonomic Bulletin & Review, 14, 620-628.
    • VSTMの容量を左右しているものは何か?これまでは刺激ベースの特性(複雑さ、カテゴリーが同じかどうか)に注目されてきたが、この研究では質的な違い(全体処理がなされるか)に注目する。
    • 呈示時間が短いときは、顔よりもオブジェクトの方がよく覚えられる。呈示時間が長いと、顔(特に正立顔)の方が覚えられる。
    • 呈示時間が十分にあるときは、holistic処理ができるかどうかが鍵になる。全体処理をすることで独立した複数の情報を統合することができるため、情報を圧縮して保持することができると考えられる。
  4. Dunn, J. D., Ritchie, K. L., Kemp, R. I., & White, D. (2019). Familiarity does not inhibit image-specific encoding of faces. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 45(7), 841–854.
    • 親近性の高い顔がどのような状態でも認識できるのは抽象的な表象が形成されているからだと言うが、画像特異的な詳細情報は符号化時に削ぎ落としているのか?
    • 画像特異的な詳細情報の記憶(符号化)は、画像の人物の親近性の影響を受けない。
    • 記憶の中で画像特異的な詳細情報を欠落させているのは長期記憶のシステム(どのタイミングでなくしているのかは今後の検討課題)
  5. Marcon, J. L., Meissner, C. A., Frueh, M., Susa, K. J., & MacLin, O. H. (2010). Perceptual identification and the cross-race effect. VISUAL COGNITION, 18, 767-779.
    • 符号化にかけられる時間が短い(100 ms、500 ms)と、人種効果が見られる(正答率に違いがある)。
    • セットサイズが増えると、人種効果が見られる(正答率に違いがある)。
    • 保持時間が長くなると、人種効果が見られる(正答率に違いがある)。
  6. Zhou, X., Mondloch, C. J., Emrich, S. M. (2018). Encoding differences affect the number and precision of own-race versus other-race faces stored in visual working memory. Attention, Perception, & Psychophysics, 80, 702–712.
    • 人種効果において、自人種顔と他人種顔で、表象の性質がどのように異なるのか?表象の正確性をcontinuous-response paradigmと混合モデルを使って検討する。
    • 符号化にかけられる時間が短いときは、自人種顔の方が他人種顔よりも表象が正確。符号化にかけられる時間が十分にあるときは、他人種顔も自人種顔と同じくらい正確な表象を形成できる。
    • 他人種顔の符号化が遅い(効率が悪い)ため、人種効果が生じているのかもしれない。

 

 

object


general

  1. Becker, M. W., Miller, J. R., Liu, T. (2013). A severe capacity limit in the consolidation of orientation information into visual short-term memory. Attention, Perception, & Psychophysics, 75, 415-425.
    • 色パッチだと、VSTMへの固定化は並列処理だが、果たして方向(ガボールパッチ)では?
    • ガボールパッチでは、記憶刺激が同時に呈示されるよりも継時的に呈示された方が記憶成績がよかった。
    • 方向のVSTMへの固定化は容量が制限されている。色の記憶とは違うみたい。
  2. Carpenter, R. (2018). Pokémon Go as a positive virtual reality game: Promoting cognitive, affective, and empathic benefits (Unpublished master’s thesis). UNIVERSITY of NORTH FLORIDA, America.
    • ポケモンGoはいいぞ。
    • Alloway Working Memory Assessment (AWMA)を使って、言語性WMと視覚性WMをポケモンGoプレイ前後で測定。感情状態と共感性も測定。
    • ポケモンGoのあとで、言語性WM得点が向上し、ネガティヴ感情得点が低下した。共感性は変化しなかった。
  3. Liu, T., & Becker, M. W. (2013). Serial consolidation of orientation information into visual short-term memory. Psychological Science, 24, 1044–1050.
    • 刺激の固定化は並列処理できるのか、それとも継時的に処理されるのかを切り分ける新しいパラダイムを紹介する。混合モデルも使う。
    • ガボールパッチが同時に呈示されたときは、継時的に呈示されたときよりもVSTM課題のパフォーマンスが悪い。表象がノイジー。ゲスレイトも高い。
    • VSTMへの固定化は1つずつ。
  4. Miller, J. R., Becker, M. W., Liu, T. (2014). The bandwidth of consolidation into visual short-term memory depends on the visual feature. Visual Cognition, 22, 920-947.
    • VSTMに視覚情報を固定化できる限界を調べる。
    • 色は方向よりも符号化する情報量が少ない。その結果、色は2つ呈示されても処理容量の上限に達することなく並列処理することができる。
    • 方向2つとか、色と方向1つずつだと、並列処理で済ませられる範囲を超えてしまうため、継時的にしか処理できない。
  5. 苧阪 満里子・苧阪 直行 (1994). 読みとワーキングメモリ容量――日本語版リーディングスパンテストによる測定―― 心理学研究, 65, 339–345.
    • 日本語の文を用いたリーディングスパンテストの開発を実施。
    • 測定の結果を英語版のリーディングスパンテストと比較。
    • 日本語版のリーディングスパンテストでは、言語に関わるWMが測定されている。

 

encoding / consolidation

  1. Brady, T. F., Konkle, K., Oliva, A., & Alvarez, G. A. (2009). Detecting changes in real-world objects: The relationship between visual long-term memory and change blindness. Communicative & Integrative Biology, 2:1, 1-3, DOI: 10.4161/cib.2.1.7297
    • 長期記憶があることで、たくさんの視覚的オブジェクトを覚えられる。
    • ただし、符号化の時間が十分にあることが条件。
    • Change blindnessが生じるのは、符号化が不十分だから。容量が小さいのではない。
  2. Huebner, G. M., & Gegenfurtner, K. R. (2010). Effects of viewing time, fixations, and viewing strategies on visual memory for briefly presented natural objects. THE QUARTERLY JOURNAL OF EXPERIMENTAL PSYCHOLOGY, 63, 1398-1413.
    • 呈示時間が長くなると記憶容量が増える。でもこれは、短い呈示時間の間(1秒以内)は効果が小さい。呈示時間が長くなることが直接の要因ではなく、刺激を注視できるかどうかが重要?
    • 条件をブロック化するのとランダムに呈示するので記憶成績に影響するか?
    • 注視の効果は呈示時間が短いとき(1秒)だけに見られた。めっちゃ長い時間(7秒)は長期記憶へ転送されてるから成績がいいのかも。
    • ブロック化するかどうかは、記憶成績には影響しない(注視には影響する)。
  3. Jannati, A., McDonald, J. J., & Lollo, V. D. (2015). Individual differences in rate of encoding predict estimates of visual short-term memory capacity (K). Canadian Journal of Experimental Psychology, 69, 213-220.
    • 色刺激、文字刺激を用いてBackward-Masking Task(符号化速度を測定)とChange-Detection Task(VSTM容量を測定)を実施した。
    • 符号化が速いと容量(K)が大きいことがわかった。符号化が速い人ほど容量が大きい。
    • これまで測定されていたKは符号化速度のアーティファクトだった?
  4. Ricker, T. J. (2015). The role of short-term consolidation in memory persistence. AIMS Neuroscience, 2, 259-279.
    • encodingとconsolidationを切り分けたいレビュー。
    • マスクの前の時間を操作するのがencodingを調べる実験、マスクの後の時間を操作するのがconsolidationを調べる実験。
    • 顔を使った実験の例も載っている。
  5. Tsuda, H., & Saiki, J. (2018). Gradual formation of visual working memory representations of motion directions. Attention, Perception, & Psychophysics, doi:10.1167/18.8.14
    • 動きの方向のVWM表象の形成が漸進的であるかどうかを調べた研究。動きの複雑さの影響についても検討。
    • 覚えられる数と正確性を測定する。
    • 動きが複雑な場合は、記憶表象の正確性の向上がゆっくり。
  6. Xie, W., & Zhang, W. (2017). Dissociations of the number and precision of visual short-term memory representations in change detection. Memory & Cognition, 45, 1423-1437.
    • 変化検出課題(the color change- detection task with confidence report)の成績からROCモデルを基にして求めた視覚性短期記憶の表象の数と正確性の推定値は、連続的に記憶表象を測定する課題(The continuous color-recall task)の成績から混合モデルを基にして求めたものと関連があった。
    • 記憶時に刺激にノイズをかぶせると、記憶の正確性に影響する。
    • 符号化にかけられる時間を操作すると、記憶の数に影響する。
  7. Xie, W., & Zhang, W. (2017). Discrete item-based and continuous configural representations in visual short- term memory. Visual Cognition, 25, 21-33.
    • 個々のアイテムベースの情報も、全体的な形態の情報も、視覚性短期記憶に貯蔵されうる。
    • 実験的に、どういう情報が符号化されるかを操作することができた。線分を円で囲むかどうか、配置に規則性を持たせるかどうか、線分同士を線で繋げるかどうか。
    • d’(continuous signal detection theory)は全体的な形態の情報を反映させる。HT(high threshold component, dual-trace signal detection model)は個々のアイテムベースの情報を反映させる。

 

familiarlity

  1. Asp, I., Störmer, V., & Brady, T. (preprint). Greater visual working memory capacity for visually- matched stimuli when they are recognized as meaningful. doi:10.31234/osf.io/r6njf 
    • 顔に見える曖昧刺激と顔に見えない曖昧刺激のWMを比較。
    • 物理的には同じものであっても、顔のように見える刺激の方が記憶成績が良い。
    • WM容量は固定ではない。どういう情報を保存するか、その刺激をどう解釈したかで変わる。顔のような意味のある刺激(高度なテンプレートがある刺激)には追加リソースがある。既存の知識とリンクさせやすい。
  2. Jones, T., Hadley, H., Cataldo, A. M., Arnold, E., Curran, T., Tanaka, J. W., & Scotto, L. S. (2018). Neural and behavioral effects of subordinate-level training of novel objects across manipulations of color and spatial frequency. European Journal of Neuroscience, 1–12, doi: 10.1111/ejn.13889
    • 知覚的な熟達化(expertise)について。
    • 人工的なオブジェクトの属性レベル(動物でいうと、例えば「犬」)の学習と種類レベル(例えば、犬の中でも「柴犬」)の学習を行った。その間、ERPの記録も行った。
    • N170とN250は細かい種類を見分けることができるようなエキスパートになっているかどうかの指標となる。
  3. Olson, I. R., & Jiang, Y. (2004). Visual short-term memory is not improved by training. Memory & Cognition, 32, 1326-1332.
    • 刺激の配置が反復される条件と反復されない条件で変化検出課題を実施。
    • 反復呈示されたかどうかで成績は変わらない(反復呈示された配置は長期記憶に保持されてはいるが)。
    • 長期記憶の情報の正確さは、短期記憶の情報の正確さよりも劣るため、短期記憶に恩恵がなかったのでは。
  4. Rajsic, J., Burton, J. A., & Woodman, G. F. (2018). Contralateral delay activity tracks the storage of visually presented letters and words. Psychophysiology, https://doi.org/10.1111/psyp.13282
    • 文字、単語の短期記憶容量をCDAを使って測定した。
    • 文字と色で容量に差は見られなかった。単語の容量は色よりも大きかった(単語のパフォーマンス自体は悪かった)。
    • 単語ごとに多くの特徴が記憶されている?あるいは、空間的注意を要しているのを反映している?
  5. Stojanoski, B., Emrich, S. M., & Cusack, R. (preprint). Representation of semantic information in ventral areas during encoding is associated with improved visual short-term memory. 
    • 刺激の意味的な情報と歪み具合を操作した調整課題を実施。脳活動を測定して符号化と保持の関係を探る。
    • 歪みが大きい方がゲスレイトが高く(当てずっぽう)、SDも大きい(表象の正確性が低い)。意味情報は記憶を数でも正確性でも助けている。
    • 意味的な情報は課題とは無関連でも記憶のアドバンテージになる。意味情報はオブジェクトを抽象的なレベルで符号化できるようにして記憶の負荷を下げている。
  6. Xie, W., & Zhang, W. (2017). Familiarity increases the number of remembered Pokémon in visual short-term memory. Memory & Cognition, 45, 677-689.
    • 親近性の高い刺激(第1世代ポケモン)は、親近性の低い刺激(最新世代ポケモン)よりも多く覚えられる。
    • 実験的にトレーニングを積んで親近性を高めたのではなく、これまで様々なメディアでポケモンに接してきたこと(実験参加者自身の長期記憶)が、視覚性短期記憶の量と質に及ぼす影響を調べた。
    • 長期記憶の存在で容量が増大する。全体処理やfusiform face areaのような熟達化による特化されたメカニズムが働いている?
  7. Zimmer, H. D., & Fischer, B. (2020). Visual working memory of Chinese characters and expertise: The expert’s memory advantage is based on long-term knowledge of visual word forms. frontiers in Psychology, doi: 10.3389/fpsyg.2020.00516
    • ネイティブ中国話者(中国人)とドイツ人に対して漢字の変化検出課題を実施。
    • 中国語話者は中国語を知らない人よりも漢字のVWM容量が大きい。漢字を視覚的な表象としてVWMに保持している。
    • 長期記憶の中に一般的な形(テンプレート)を持っていることで素早く刺激を同定できる。そのため、知覚時に細かいところまで符号化しなくてもその刺激が何であるかがわかる。また、長期記憶表象が利用できることで、小さな違いであっても検出できるようになる。

 

 

encoding / consolidation

    • トレーニングをして親近性を高めた刺激とトレーニングをしていない刺激の課題成績の比較。
    • 刺激に対する親近性を高めると、短い呈示時間(500 ms)やSOA(517 ms)でも記憶課題の正答率が高く、マスク刺激の妨害を受けづらい。
  1. Brady, T. F., Störmer, V. S., Alvarez, G. A. (2016). Working memory is not fixed-capacity: More active storage capacity for real-world objects than for simple stimuli. PNAS, 113, 7459-7464.
    • 単純な刺激はWM容量に上限があるが、日常的なオブジェクトは符号化の時間が長いほどたくさん細かいところまで覚えられる。
    • これは、単に長期記憶(エピソード記憶)を利用しているだけではない。
    • WMの容量(ストレージ)が活性化していることを、EEGを使って示した。WMの容量は、私たちが持っている知識に依存する。
  2. Curby, K. M., & Gauthier, I. (2009). The temporal advantage for individuating objects of expertise: Perceptual expertise is an early riser. Journal of Vision, 9, 1-13. 
    • 車のsequential matching taskを実施。
    • 車に詳しい人の成績は早い段階(符号化できる時間が短いとき)から詳しくない人より良い。時間に余裕が出てきても、そのまま車に詳しい人の成績の方が良い。
    • 成績(d’)の増加率は車に詳しい人とそうでない人の間で違いがない。車に詳しい人は情報を蓄積し始めるのが早いだけで、処理速度が速いのではない。
  3. Curby, K. M., Glazek, K., & Gauthier, I. (2009). A visual short-term memory advantage for objects of expertise. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 35, 94-107.
    • オブジェクトよりも顔の方がたくさん覚えられるのは、顔がホリスティック処理で処理されるから。だったら、車に対するエキスパート(エキスパートになると顔みたいにホリスティック処理ができる)は車のVSTMの容量が大きいのでは?
    • 車のエキスパートは車初心者に比べてVSTM容量が大きい。単に言語的な手がかりを使っているわけでも、長期記憶表象を利用しているわけでもなさそう。
    • 処理が優位になることで、VSTMシステムを最大限利用できるようになる。
  4. Lefton, L. A., & Spragins, A. B. (1974). Orthographic structure and reading experience affect the transfer from iconic to short-term memory. Journal of Experimental Psychology, 103, 775-781.
    • 文章を読んだ経験の多い人(3年生、5年生、大人)と少ない人(小学1年生)の単語の記憶(iconic memory → short-term memory)。
    • 呈示時間が増えると、より多くの文字を処理できる。この傾向は学年が上がると強くなる。単語の左側の文字の方が正確。
    • ランダムな文字列よりも、正しい綴りの単語の処理が速い。これには文章を読む経験が影響している。
  5. Ngiam, W. X. Q., Khaw, K. L. C., Holcombe, A. O., & Goodbourn, P. T. (2018). Visual working memory for letters varies with familiarity but not complexity. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 45, 1761–1775. 
    •  文字(母国語の文字:親近性の高い文字、未学習の言語の文字:親近性の低い文字)のVWM
    • 変化検出課題を用いて、文字のVWMの容量と符号化スピードを検討。
    • 親近性の高い文字は親近性の低い文字と比べてVSTM容量が大きい。親近性の効果に文字が持つ物理的な複雑さは関連しない(文字のVWMの容量と符号化速度には、複雑さよりも親近性が影響している)。
  6. Pashler, H. (1988). Familiarity and visual change detection. Perception & Psychophysics, 44, 369-378.
    • 文字の向き(反転しているかどうか)で親近性を操作し、変化検出課題を実施。
    • 呈示時間が短いときも長いときも、文字の向きでsensitivity(d’)に違いがなかった。
    • 変化の検出は容量制限のある視覚記憶に依存している。 知識(長期記憶)は、VSTMのパフォーマンスに貢献していない。
  7. Phillips, W. A. (1971). Does familiarity affect transfer from an iconic to a short-term memory? Perception & Psychophysics, 10, 153-157.
    • テスト刺激がセッション内で同じかランダムかで親近性を操作(セッション内で同じの方が親近性高条件)。
    • 呈示時間が短いときも長いときも一貫して親近性高条件でパフォーマンス(d’)が高かった。
    • iconic memoryから短期記憶への情報の移動は、マスクできない視覚情報によって調整されている。親近性が高いと表象のセットアップが速い。
  8. Xie, W., & Zhang, W. (2017). Familiarity speeds up visual short-term memory consolidation. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 43, 1207-1221.
    • 親近性の高い刺激(第1世代ポケモン)の符号化・固定化は、親近性の低い刺激(最新世代ポケモン)の符号化・固定化よりも速い。
    • 符号化・固定化にかけられる時間が十分にあれば、親近性の低い刺激でも、親近性の高い刺激と同じくらいの数が覚えられる。
  9. Xie, W., & Zhang, W. (2018). Familiarity speeds up visual short-term memory consolidation: Electrophysiological evidence from contralateral delay activities. Journal of Cognitive Neuroscience, 30, 1-13. 
    • 前から持っている長期記憶(刺激に対する親近性)がVSTMの固定化の速度と容量にどう影響するかをCDA(contralateral delay activity)を測定して調べた。
    • 固定化の速度は親近性の影響を受けた。
    • 記憶できた数は呈示時間が短く、固定化が未完の場合に親近性の影響を受けた。符号化が十分にできる場合、親近性は記憶できた数に影響しなかった。