日本心理学会(@熊本)のシンポジウムに登壇したときの話

「来年度9月(2024年9月)開催の日本心理学会企画シンポジウムについて、 もし可能であれば、講演者としてご登壇いただけないかと思い、 メールをお送りさせていただきました。」

2024年3月、私の元に1通のメールが届きました。後輩たちに多様な進路選択に関する情報を伝える、という趣旨のシンポジウムのお話でした。お会いしたことのない方でしたが、これまで私のホームページを見てくださっており、そこからお声がけいただきました。

面識のない方から、ホームページでの発信をきっかけにシンポジウム登壇のお誘いをいただくなんて、初めてのこと。本当に嬉しく、光栄でした。会社の広報の方に連絡をし、許可をいただいた上でお引き受けすることにしました。

本記事では、1年ちょっと越しの振り返りとなりますが、そうして参加した日本心理学会@熊本でのことを書いてみたいと思います。

 

2024年9月:日本心理学会第88回大会にて大会企画シンポジウム(若手が進路をあきらめないための「新しい支援体制」と「戦略」のありかた)に登壇しました。

 

 

 


 

登壇の経緯

私がこのシンポジウム登壇へのお誘いを引き受けたのは、シンポジウムの企画趣旨に共感したからでした。

 

(中略)大学院生や若手研究者において、学位取得を目指したり、アカポス・一般企業などへの就職活動を行ったりするにあたって、受けられる支援については、所属する研究室や大学に依存する傾向が見られます。つまり、「知らなかった」「教えてもらえなかった」と言った、情報格差が存在しているわけです。

ーーシンポジウム概要より

※アカポス:アカデミックポスト(大学などの研究職)

 

私自身は院生時代、先輩方からたくさん世話を焼いていただきました。

関西学院大学文学研究科の心理は、研究室ごとに院生室があるのではなく、研究室関係なく院生がひとつの部屋に集まる合同研究室スタイルでした。そのため、自分が所属する研究室以外の同期・先輩との接点も多く、研究のことも研究以外のことも、雑談的に色々な話をすることができました。

また、研究室の先輩から「関西若手実験心理学研究会」や「注意と認知研究会」に誘っていただき、他大学の同期・先輩方と知り合う機会も得ました。会う頻度は少なくても、研究会の場や学会で会えばいつも楽しく、他愛もない雑談から研究の話まで、色々な話をすることができました。

そうした環境で過ごしていたので、院生というのは大体みんなこんな感じなのだろうと思っていたのですが、どうもそうじゃないらしい、むしろこうしたコミュニティに所属できることの方が稀であるということを、会社員になってから知りました。

アカデミアを離れた今だからこそ、自分の経験をこうした場で伝えることが、ささやかな恩返しになるのではないか。そんなふうに思って、お引き受けすることにしました。

 

 

 

シンポジウム当日の様子

朝イチの時間帯にも関わらず、多くの方にご来場いただきました。学生から先生方まで幅広い方々にご参加いただき、テーマに対する関心の高さが伺えますね。

日本心理学会の若手の会が主催するシンポジウムですので、やはり当事者である学生の方が多かったのですが、それだけでなく、研究室で学生の指導に当たる先生たちにもご参加いただけたのが印象的でした。国立研究開発法人科学技術振興機構の方から新しい支援制度のお話もありましたし、ご参加の先生方から学生への情報提供が進むと嬉しいです。

また、シンポジウム終了後に学生から質問に来ていただけました。「修士で就職しようと思っているが、これまでの研究で得たスキルや、自分のやりたいことを実現できる会社がなかなか見つからない」といった内容だったと思います。そのとき、相手が求める回答を私が上手く伝えられていたかはわかりません。しかし、初対面の人に質問に来られるその勇気があれば、きっとこの先の就職活動も、自分なりにしっかり歩んでいけるはず。そんなふうに感じた場面でした。

 

 

 

伝えたかったこと

私が今学生をしている皆さんに伝えたいことは、過去に記事を書いたときから一貫しています。それは、「研究テーマそのものが仕事に活きる可能性は低くても、研究を通して得たスキルは仕事に役立つ」ということです。

ざっと例を挙げると、以下の通りでしょうか。

  • 論理的な文章を組み立てる力
  • 問いを立て、構造化して考える力
  • ゴールに向かってスケジュールを立て、遂行していくプロジェクトマネジメント力
  • 分析設計・実験計画を立てる力
  • 統計的な分析を実行する力

今、研究を通して身につけていることは、巡り巡って、研究以外の領域でも大いに役立ちます。就職活動の際には、自分のこれまでを丁寧に振り返って、「この経験は他の場面にも応用できるかもしれない」という視点で整理するのがおすすめです

 

▼過去の記事はこちら
博士後期課程満期退学で就職した話(21卒)
エントリーシートを書くときに気をつけたこと

 

 

 


最後に

大学院の中にいると、周りは本当にすごい人だらけで、自分には何のスキルもないんじゃないか、何もできないんじゃないか――と感じてしまうことがあると思います。

でも、一歩外に出てみると、これまで自分が学んできたことや積み重ねてきた経験が、意外なところで役立ったり、思いがけず重宝されたりする場面がたくさんあります。

だからこそ、いろんな方法で、自分の可能性を試してほしい。大学や研究室という小さな世界の中だけでなく、もっと外にも目を向けてみてほしい。そうすれば、きっと「ここでも自分はやっていけるんだ」と思える場所が見つかるはずです。

人生に「正解」なんてありません。アカデミアでとことんやり切るもよし、一度寄り道してからアカデミアに戻ってくるもよし、ある程度自分の気が済むまでやったら他の領域でチャレンジするもよし、だと思います。どうか、最後に悔いのない選択をして、ご自身の物語を紡いでいってください。