率直な意見や質問が出てきやすい、コミュニケーションが活発なチームを作るにはどうすれば良いのだろう……と考えたことはありませんか?私自身はまだチームをリードする立場ではないですが、「夏頃にうちのチームに配属される(かもしれない)新卒の方にとって良き先輩であるためにはどうすれば良いか」を考えたりしています。
こうした悩みは、『心理的安全性のつくりかた』を読むことで解決の糸口が見つかるかもしれません。
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著者紹介
『心理的安全性のつくりかた』は石井遼介さんによって書かれた心理的安全性の理論と実践を解説した本です。石井さんは東京大学工学部を卒業された後、シンガポール国立大学で経営学修士(MBA)を取得されています。現在は、株式会社ZENTech取締役、慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 研究員、一般社団法人 日本認知科学研究所 理事を務めていらっしゃるそうです。
「心理的安全性のつくりかた」
はじめにを全文無料公開します!「心理的安全性」ってなんだろ?と思う皆さんへ! pic.twitter.com/d11S1MVk8i
— 石井 遼介 (@ryouen) September 1, 2020
この本が書かれた背景
これからは正解のない時代、複雑で不確実な時代、先が不透明な時代だと言われています。実際、ほんの数年前まではほとんどの人がマスクをせずに生活していましたが、今では道ゆく人みんながマスクをしています。これほど生活が一変することを誰が予想できていたでしょうか。
このように、明日何が起こるかわからない世界だからこそ、新しいことにどんどん挑戦して、失敗から学び、そしてまた挑戦を続ける必要があります。そのためには、チームで率直に議論できる必要があるのです。
しかし、わからないなと思ったらすぐに「わからない」と言うこと、なんか違うなと思ったらすぐに「それはちょっと違うのでは?」と言うことは、案外難しいものです。チームのメンバーがなかなか率直に話してくれないと悩むマネージャーの方もいらっしゃるかもしれません。こうした課題を解決するのが、心理的安全性が高いチーム作りです。
この本の内容(大筋)
本書のキーワードは
- 心理的安全性
- 心理的柔軟性
- 行動分析
だと思います。
心理的安全性とは、「このチームの中で対人関係におけるリスクを取っても大丈夫だ」と思えることです。ここで言う対人関係におけるリスクとは、
- 無知だと思われるリスク
- 無能だと思われるリスク
- 邪魔だと思われるリスク
- 否定的だと思われるリスク
のことです。したがって、心理的安全性が高いチームとは、どんな質問をしても「そんなことも知らないのか」とか「そんなこともできないのか」と思われることはないと信じられるチームのことを指します。また、心理的安全性が高いチームでは、どんな意見を言っても厄介に思われることはないと信じられるので、率直な意見が出てきやすくなります。
こうした心理的安全性が高いチームを作るためには、心理的柔軟性が高いリーダーシップが必要です。リーダーシップが心理的に柔軟であることとは、チームの状況や個人の特徴、成長度合いに合わせて柔軟にリーダーシップのスタイルを変えられることを指します。チームの状況やメンバーに適したリーダーシップを取ることで、メンバーが話しやすくなったり、ここは安全な場所だと感じやすくなったりします。
そして、自分自身やメンバーの行動を変えるために、行動分析の考え方が役に立ちます。行動は何かしらのきっかけがあって生じます。そして、行動の結果どのような見返りがあったかによって、次に同じきっかけがあったときに同じ行動が生じるかが変わります。
例えば、何かトラブルがあったとき(きっかけ)、報告をすると(行動)、「なんでそんなことが起きたんだ」と叱責された(見返り)とします。このとき、叱責されたという結果は嫌な見返りです。そのため、次にトラブルがあったとき、嫌な見返りを避けようと報告行動が減少してしまう可能性があります。逆に、何かトラブルがあって報告した結果、「報告してくれてありがとう」と感謝してもらえる(良い見返り)と、次にトラブルがあったときにも報告してもらいやすくなります。
自分の言動は、相手の行動の見返りとなります。そのことを意識して相手とコミュニケーションを取ることで、話しやすい環境(心理的に安全な環境)を作ることができると考えられます。
感想
本書は令和の組織づくりにおける必読書であるように感じました。「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」でマネジメント部門賞を受賞したり、「週刊東洋経済 ベストブック2021特集 ビジネス書ランキング」で第2位に選ばれていたり、「日本の人事部 HR Award 2021 書籍部門」で優秀賞を受賞したりしていることからも、ビジネスに関わる人たちの関心の高さが伺えます。
また、行動分析や学習の概念が、心理学を一切履修したことがない人にとってもわかりやすく説明されていると感じました。本書を読んで「心理学って面白いな」と思ってくれる人や、「心理学をもっと勉強してみよう」と思ってくれる人もいるのではないでしょうか。
心理的安全性について理解を含めるために、今度は心理的安全性の概念を生み出したエイミー・C・エドモンドソンの『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』を読んでみようかなと思います。